結婚・出産年齢の高齢化が進んでいることもあり、不妊治療が注目を集めるようになった昨今、一言で「不妊治療」といっても方法は様々です。今回は「シリンジ法」と呼ばれる方法に注目して、高齢妊活にシリンジ法は有効かどうかを調べました。
目次
シリンジ法について
まず、シリンジ法の具体的な方法や有効な場合を知っておきましょう。
シリンジ法とは
そもそも「シリンジ法」とはどういった方法なのでしょうか。名前の通り、注射器の筒状の「シリンジ」を使って採取した精子を膣内に入れる方法です。「スポイト法」「膣内注入法」と呼ばれることもあります。自宅で出来る方法で、主に人工授精に進む前段階や人工授精と併用して行われています。
シリンジ法が有効な人は?
シリンジ法は、性交渉が困難なカップルに特に有効です。男性がEDなどで膣内で射精出来ない場合など、何らかの理由で性交渉を持つのが難しいが精液が採取出来る場合に有効です。また、人工授精と比べて費用が安価であり通院時間もかからないため、費用をなるべくかけずに治療したい人、忙しい人にも向いています。
旦那さんが高齢の場合に有効?
シリンジ法は人工授精とは異なり、射精された精子をそのまま膣内に戻します。旦那さんの年齢というよりは、精液に問題がないことが重要です。性交渉を持ちたい時に体力がない、プレッシャーに感じてしまう、という場合はシリンジ法は有効と言えます。
シリンジ法で双子は生まれる?
シリンジ法そのもので双子を妊娠するというより、排卵誘発剤を併用した場合に確率が上がります。この場合は、卵子が2つ排卵されての妊娠となるため二卵性の双子です。一卵性の双子になる確率は自然妊娠と変わりません。あくまでも排卵誘発剤の使用の有無がポイントになってきます。
シリンジ法の妊娠率
シリンジ法の妊娠率は、自然妊娠の確率と同じです。採取した精液をそのまま膣内に戻す方法のため、通常の性交渉を行った場合とほぼ差がないと考えてよいでしょう。具体的には1回行うと約10%の確率です。しかし、年齢によって妊娠率は大きく変わってきます。一般的に、30代後半になると自然妊娠率は低下します。シリンジ法も同じです。排卵日前後にシリンジ法を行ったとして、妊娠率と年齢の関係は下の表のようになっています。
20代~30代前半 | 約25~30% |
30代後半 | 約18% |
40代前半 | 約5% |
40代後半 | 約1% |
シリンジ法は危険なの?
処置を「自分たちで行う」という点から「危険はないか」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。きちんと方法と手順を守って行えば、危険は最小限に抑えられます。シリンジ法を行うにあたって考えられるリスクには以下のようなものがあります。
腹膜炎になる?
腹膜炎とは、本来なら無菌状態の腹膜に細菌が感染し炎症を起こしている状態です。膣内は酸性に保たれており細菌の感染を防いでいます。精液に含まれる雑菌も膣内を通過することで死滅します。シリンジ法で直接子宮内に精液を戻してしまうと、雑菌が直接子宮に入ってしまう可能性があり腹膜炎を起こしてしまう可能性があります。通常の性交渉のように精液を膣内に戻せば腹膜炎になる確率は上がりません。
シリンジ法は痛い?
シリンジを膣内に入れて行うため「痛そう」と思いがちですが、正しい方法で行えば痛みは最小限に抑えられます。挿入部分は医療用のシリコン素材で出来ていますし、挿入部分を滑らかにする、無理やり奥に押し込まない、落ち着いて行う、といったことを守って行ってくださいね。
感染症リスクは?
シリンジ法で使う道具は原則的に使い捨てで、衛生的な状態で販売されています。一回ごと必ず新しいものを使う事、子宮内でなく膣内に精液を戻すこと、シリンジ法専用の道具を使う事、これらのことを守って正しく行えば、シリンジ法だからといって感染症のリスクが上がるわけではありません。
シリンジ法にフーナーテストは必要?
妊活を始めて行う検査には様々な種類がありますが、
シリンジ法を行うにあたって事前にフーナーテストを行っておくべきなのでしょうか?
フーナーテストとは
フーナーテストとは、性交渉後に子宮頚管粘液内にある精子の状態を確認する検査です。妊活の初期段階に行われることが多く、精子の運動状態や数を調べることで女性の子宮頚管粘液と男性の精子の相性を確認します。基本的に、シリンジ法が有効なのは卵子や精子に問題がない場合ですので、フーナーテストをクリアしている状態で行うのが望ましいと言えます。
無精子症の確率
無精子症とは、男性の精液中に精子が全く含まれていないという症状です。男性の100人に1人は無精子症で、不妊治療を行っている患者のうち5人に1人が該当すると言われています。無精子症は治療や投薬で改善が見込めます。
効果的なシリンジ法
実際に行うとしたら、少しでも妊娠率をあげたいものです。実際にシリンジ法を行うにあたって効果的な方法を試しましょう。
シリンジ法を行うのに効果的な時期
受精しやすいタイミングは、卵子と精子の寿命から逆算すると排卵後6時間以内、射精後48時間以内です。排卵直後の新鮮な卵子と精子が出会う確率を高めるため、排卵2日前にシリンジ法を行うのが理想的です。
逆流してしまう場合
シリンジ法を実施直後に女性が動いてしまうと、戻した精液が逆流してしまうことがあります。直後は横になったまま30分程度動かないで安静にしておきましょう。
精液がこぼれてしまう場合
女性が自分で膣内に精液を戻そうとする場合、精液がこぼれてしまうことが多いです。体勢的にも難しくなるため、なるべく男性に戻してもらうようにして下さい。
まとめ
シリンジ法についてご紹介しました。病院に行く頻度も少なく、費用も安価であり自分たちの手で行える方法ですので不妊治療としては試しやすいと言えます。正しく行えば比較的安全で手軽ですので、手段の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
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